アメリカのメイクアップブランドであるメイベリンニューヨークが実施した施策について紹介します。
化粧品の消費者は、メイクアップのニーズに従い複数のブランドを利用する傾向があるといいます。実際、メイベリンニューヨークは特にマスカラでは世界シェア1位ですが、基礎化粧品などシェア率の低い製品ラインもあり、そのマーケットシェアの強化を課題としていました。

そこで多くの消費者の新製品を試す消費意欲を高めるにはどうすべきかを調査し、訴求ポイントとして「多くの消費者は、肌質(乾燥肌、脂性肌など)に対して最適な基礎化粧品の選択、化粧方法を知らないという点」に着目しました。
これを消費者の様々な特性に基づいた適切なメッセージとして届けるため、パーソナライゼーション戦略とコンテンツマーケティングからなるキャンペーンを実施。キャンペーンでは、基礎化粧品の選択・使用方法について消費者に紹介し、メイベリンニューヨークの製品が如何にしてその最適なおすすめとなりうるかを提案しています。

パーソナライズの実現方法

このキャンペーンはメイベリンニューヨークのWebサイトやSNSを利用したアンケートへの参加からスタートします。アンケートには個人の民族性、紙や目、肌の色、肌の状態などを含む12種の質問があり、この回答内容によって消費者の肌質を理解し、それに合わせたコンテンツの提供を可能とします。

キャンペーンツールとしてはA6サイズの20ページの冊子を利用しました。
冊子は基礎化粧品についてのレッスンコンテンツ、おすすめの製品、特別割引クーポンからなる構成ですが、そのコンテンツはアンケートの回答に応じて完全なパーソナライズ化を実現。消費者の肌質に合わせたレッスン、肌質や肌色に合わせたおすすめ製品、おすすめ製品に応じたクーポンを掲載します。さらにこの冊子を全3回のシリーズとして、350万件にも及ぶ冊子として消費者に順次配布しました。

パーソナライズキャンペーンの効果

このキャンペーンでは継続的に安定して高いパーソナライズキャンペーンの効果ROI効果を示しました。クーポンは個別に利用率を測定出来るようにし、パーソナライズされていないキャンペーンのクーポンと比較して、何倍もの売上を実現。さらに、売上のほとんどが、競合ブランドを利用していたユーザからの乗換えとなり、基礎化粧品分野でのメイベリンニューヨークブランドの認知度をも向上しました。
メイベリンニューヨークの個人に合わせた提案冊子を、多くの消費者は価値の高いものとして受け入れてくれたのです。


ブランドへのロイヤルティの高い消費者ほど、紙メディアを受け取ったときそのブランドに大切にされているという満足感を高く感じるそうですが、この様にパーソナライズされているとひと目で分かるコンテンツだとなおさらでしょう。しかもこのキャンペーン、実は今から10年以上前の2009年から実施された施策です。日本では先進的に聞こえますが、パーソナライズした紙メディアはずっと昔から行われているのです。デジタルマーケティングによりこの様な紙メディア施策とデジタル施策の区分はなくなり、一つの施策の中で紙メディアもデジタルメディアも自由に活用できるようになってきています。